GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~

セイセツ様って、誰?

一瞬そう思ったけれど、すぐに私の脳裏にあの日見た律のビジョンが蘇った。

清雪……。

……多分、死体の山から律を引っ張り出し、流行り病から彼を救ったあの綺麗な男性だ。

だって声が……あの時の彼だもの。

瞬く間に私の鼓動が早くなっていく。

息が苦しい。

思わず胸に手を当てて眉を寄せると、私は口を開けて静かに息を吸った。

「……そうか。ではそろそろ準備にかからなくてはならないな。Fascinating bloodの準備は整ったのか」

清雪に尋ねられた律が、クスリと笑った。

「準備ならもう既にできてますよ。ただ」

そこで言葉を切った律に、清雪がすぐ問う。

「ただなんだ?」

「時を迷っているところです」