GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~

****

「……何処にいくの?」

「……」

雪野一臣は私の質問に答えず前を向いたまま車を走らせた。

やがてゆっくりと車を停止させると、彼は短く低い声で言った。

「降りろ。ここからは歩く」

「ねえ、何処にいくの?」

「……すぐに分かる」

大通りから幾筋も入った道路は、繁華街から遠ざかるごとに幅が狭くなっていく。

やがて私と雪野一臣は路地へと足を踏み入れ、置いてある自転車やゴミ箱を避けながら進んだ。

その路地の暗さが私を余計に不安にさせる。

建物の間を吹き抜ける風も、やけに冷たく感じて心細い。

私は我慢ができなくなって雪野一臣の背中に問いかけた。

「ねえ、どこに行くのよ。いい加減教え…」

「ここだ」