GREATEST JADE~翡翠の瞳に守られて~

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「なーに藍ちゃん!さっきからジロジロ見て」

どうしても瀬里が心配で、私は彼女を見てしまう。

「あ、いや…別に…」

「変なの」

……律に暗示をかけられた瀬里は何も代わりがなく、あの時の事はまるで覚えていないみたいだった。

瀬里が帰ってから私は不安で不安でたまらなくて、律に尋ねた。

「律。暗示ってさ、かけられた本人になにか影響はないの?」

律は優しく微笑んでから私を見た。

「大丈夫だよ。それにこれは瀬里ちゃんの為でもある」

「……瀬里のため?どうして?」

私が眉をひそめると、律が空中を見つめて短く言った。
 
「あの男……いい奴じゃないから」

雪野一臣が……?どうしてだろう。

その時、

「藍ちゃんっ!」

「あっ、ん?」

「大丈夫?!掃除だよ」

「うん、掃除だよね」

掃除道具入れのロッカーを開けたまま佇んでいた私に、瀬里が一際大きな声をかけた。

私はブンブンと頭を振ると、考えるのをやめてホウキに手を伸ばした。