「篠田君、俺達も行くよ」 蓬條依良は紗也様の手を引きながら歩き出す。 彼は頭首の座を欲していない。 寧ろ、いらないと思っているように見え、彼自身放棄を望む理由を抱えているようだった。 それに、蓬條良威という予想外な異分子。 蓬條家に復讐するには彼を手駒に使うのも手なのかもしれない。 「さて、どうするかな……」 そう思案しながら既に歩き出している兄妹の後を追いかけた。 玖下さんが獲物を見るような目で私を見ているとも知らずに──。