好きになれとは言ってない

 少し顔色が悪いような、と思いながら、窺っていると、
「どうした?」
と逆に訊かれてしまう。

「ああ、いえ。
 今朝、電車に乗ってらっしゃらなかったので、どうしたのかな、と思いまして」

 ちらと人事の中の時計を見たが、航が来るにしては遅い時間だ。

「いや、ちょっと寝過ごしたんだ」
と言われ、違和感を覚える。

 課長が寝過ごすとか、やはり、なにごとかあったのだろうか、と心配してしまう。

 そのまま行きかけた航だったが、足を止め、言ってきた。

「遥、今日は、暇か?」

「は? あっ、はいっ」
と言うと、

「ちょっと呑みに行くか」
と言われる。

「はいっ」
と言ったあとで、な、なんでだろう。

 課長から誘ってくるなんて、といろいろ考えてしまった。

 別れてくれ。

 いや、そもそも付き合ってないし。

 とか、いろいろ考え、不安になっていると、後ろから亜紀が言ってくる。