好きになれとは言ってない

「でも、ほんと真尋さんの焼きそば、美味しいんですよ。
 ナポリタンも最高です」
とようやく笑顔が出る。

「落ち着いた美人を紹介しろと言われたんですが。

 ああ、いや、落ち着いた美人に紹介しろだったかな?

 ……小宮さんは美人ですが、男ですし」
で、遥は言葉を切った。

 落ち着いてもいない、と言いたいのだろう。

「でも、僕に紹介しておくと、そのうち、美人をたくさん連れていくよ」
と微笑む。

 連れてきそうだ……、と思ったようだ。

「じゃ、しばらくそこに座ってなよ。
 僕、話し相手になってあげるから」
と言うと、遥は赤くなり、

「もう立てますよ。
 じゃあ、行きましょうか。

 あ、でも、小宮さん、あっち、帰る方向じゃないんじゃないですか?」

 いつも見ないけど、と言ってくる。

「大丈夫、大丈夫」

 実は今日、車なんだけど、と思いながら、とりあえず、そのことは伏せておくことにした。

 車だと警戒されそうな気がしたからだ。

 遥と一緒に電車に乗ることにする。