「びっくりするようなイケメンに会いたい」

 社食を出たあと、いつものようにロビーのソファでたむろしていると、亜紀がそんなことを言い出した。

「びっくりするようなイケメンに会いたい」

「なんで二度繰り返すんですか」
と優樹菜が紙コップに入った珈琲を手に言う。

 亜紀は溜息をつき、
「昨日さ、やっぱり、小宮は駄目だと思ったのよ。

 なにあれ。
 なんであんなにチャラいの?

 大魔王様みたいに堅いのも面白くないけどさ」
と言い出した。

 面白くなくて悪かったですね……。

 あの人、充分面白いですよ、人間的には。

 っていうか、皆さん、ご記憶にないようですが。

 昨日は、人斬り新海と本人に向かって呼んでましたよ。

 大魔王様という言葉がいっそ、ソフトに聞こえるな、と思っていると、優樹菜が、
「でも、大魔王様は、遥さんに対しては、全然堅物じゃないですよね」
と言ってくる。

 いや……石のように硬いと思うが。