「あ、でも……登坂さん、そろそろ期末テストの時期なんじゃない? 本ばっかり読んでて大丈夫?」

「ギク」


考えないようにしていた単語が耳に入り、咄嗟に動きを止めてしまった。

リョータは目敏く切り込んでくる。


「……いつからテスト?」

「ら、来週辺りだったかなぁ」

「本当のこと言ってください」

「あ……明日です」


諭すような低い声に、ごまかしは効かない。

正直に答えると、彼はぎょっと目を剥いた。


「明日って、こんなところで油売ってる場合じゃないじゃん」

「だ、大丈夫だよ。帰ったらちゃんと勉強するしー……」

「そういう人ほど勉強しないんだよ」


ベッドから体を乗り出したリョータによって、黄色い表紙の文庫本が奪われる。


「これは、テストが終わってからにしよう。ね」

「えぇ! 薦めたのはリョータでしょ!?」

「テストだって知ってたら薦めなかったよ」

「鬼っ」

「なんとでも言ってください」


キーキー噛みついても、当の本人はどこ吹く風。

直接言葉を交わすようになってわかったこと。リョータは結構スパルタだ。