暗く長いトンネルを抜けた。

その先に広がっていた景色は見違えるほどに晴れやか──なんてことはなかったけれど、自分がどこを走っているのかを把握することができた。

それは大きな進歩として蓄積され、今の私を支えているのだと思う。




ホイッスルの音が、鋭く高らかに晴れた空を舞った。

瞬間、出来る限りの力で土を蹴る。

ズブズブと沼に引きずり込まれるような感覚だった頃とは違う。足の裏は確かに地についていて、しっかりと地面を踏みしめている。


「千鶴先輩、12.29です!」


ゴールラインを超えた私に、トモちゃんが興奮気味にタイムを告げた。


「嘘……ほんとに?」

「嘘なんて吐かないですよぉ! ほんとです、ほら!」


高いところで結わえた髪をぴょこぴょこと跳ねさせながら、トモちゃんがストップウォッチを私に向ける。

そこには確かに、トモちゃんが言った通りのタイムが記されていた。

確認して、胸の奥がぐっと熱くなる。