あと一欠片のピース





だって、彼はいわゆるーー



「あ、いきなり話しかけてごめん。今更だけど俺、宮崎っていうんだけど」



影王子とやらだからである。




「あ、正式には、宮崎蒼馬(そうま)」



もちろん存じ上げております。


神様は今日のわたしに優しいらしい。


と思ったのもつかの間。



「こーよーいー!」



なぜこのタイミングで茜を繰り出すのですか。


神様、いじわるしてます?



「え、あれっ!? そこにいるのって、宮崎 蒼馬じゃないの!?」


「……あんた誰?」


「うち?」


「うん」


「そう言う感じね、おけおけ。うちのことを知りたいとはお目が高い! うち、広瀬 茜! 5月5日こどもの日生まれの17歳でAB型。お母さんお手製のハンバーグが世界一好きです。以後お見知り置きを!」


「はあ、…どうも」



個人情報を弾丸トークで自分でばら撒き、深々と頭を下げて影王子もとい宮崎に自己紹介をする茜。


てか、なにが「うちのことを知りたいとはお目が高い!」だよ。


王子相手にナルシスト発言かよ。


あからさまに媚び売るくせにやり方失敗してるよ、大失敗だよ。


しかもこの人クールで影があるっぽいところが良いって有名だから通用しないよ。



「そんでぇ、こいつが、」


「藤野今宵」


「ふじーってあれ、知ってた感じ?」