あ、わたしか、わたしの涙なのか。


そう気づくとそれを引き換えにしたように「だって」の続きがどこかへ消えてしまった。


シュワっとサイダーのように。


いつか自分が言った表現をそのままに。



「だって、だって、……だって、何?」



何を、何と言い訳のように言おうとしたのだろう。


少し前のことなのに、おかしなことに今となっては何もわからない。


もどかしさを感じるような、そんなこともないような。


よくわからない、なんだかもうどうでもいい。


何も考えたくないから、どうでもいい。



「帰ろ」



どうでもいいと割り切ると、途端に何もかもを捨てたり全てから逃げてもいいような、そんなことをする資格があるような気がしてきた。


まだ時間は昼休みだ。


この時間に外で購買に行く生徒に紛れて帰ってしまおう。


幸い携帯を持っていたので、スクバは置いて帰ることにした。


もしもだけど教室に行って千や茜に会ってしまったらなんか嫌だし、偶然に先輩と会うのも嫌だから、早急に学校から抜け出すべきだ。


別に困りゃしないから、手ぶらで帰ろう。


屋上の戸まで歩き、ドアノブを回すと何かが頭に当たり床に落ちた。


落ちていたのはりんご飴だった。



「帰るんなら、ちゃんと休みな」



振り返るといわゆる宮崎の特等席からひらりと彼の細い手が上がった。


わたしはなぜか今よりもっと泣き出したくなって、小声で礼を言い小走りでその場を後にした。