「待った」
ぐん、と腕を引かれる。
その拍子に背中から先輩の方へ倒れる。
先輩が支えてくれたおかげで怪我せずにすんだ、と思えば次に来るのは先輩の温もり。
「待って…」
絞り出すような懇願するような声を出す先輩にわたしはやっぱり意味がわからない。
なぜ先輩に抱きしめられているのかも、わからない。
先輩は何がしたいのだろうか。
宮崎といい、先輩といい、なぜわたしの周りの人間はこう意味がわからない行動をしたがるのだろうか。
あ、千も例外ではないか。
あいつも何をするのか全くわからない。
「あのー、先輩」
「…何?」
時計を先輩に見えるように腕を上げる。
もうチャイムが鳴ってしまいそうだ。
「お話はまたでもいいですか? また今度お願いします」
白い封筒を探す時間が無くなってしまう。
というか、もうほぼない。
……1限さぼってでも探す、か。
「先輩」
「……」
「青木先輩!」
わたしの首元に回されている先輩の腕をバシンと叩く。
「いてっ」
「時間やばいですって。予鈴もう鳴っちゃいます」
「あ」
ハッとした顔をする先輩を見て、さっきのは何だったのだという思いがかすめる。


