「ねえ今宵、昨日さ東海道線、今宵のことすごい心配してたよ」


「は? 何それ、まじキモい」



バンッと下駄箱を閉めるわたしの手には、白い封筒。


二回も見たら別に今日も封筒があっても、もう驚かない。



「あと、宮崎蒼馬が今宵のこと」


「何?」


「あ、いや……何でもない」


「は?」


「や、本当何でもない!」



何かを隠しているような茜の様子に、ちょっと疑問が浮かび上がる。


でも、慌ててそれを消そうとしているから、また聞いてくれるのかもしれないと思った。


じゃあ、いっか。




「つーか聞いてよ茜! 思うんだけど、何が影王子だっつの、あいつすごい喋るじゃん! 意味わかんないこと言うし意地悪だしあんなん王子じゃない!」


「えーそう?」


「そうでしょ!!」


「ふーん、でも顔は王子だよ?」


「宮崎みたいに顔が良ければ一般人でも王子になれる世の中なんて、わたしは一生理解できない!」



食い気味にそう言えば、背後から「俺がなに?」と声が聞こえた。


あーこれデジャブってやつじゃん。


どうせ振り返ったら無表情であいつが立っているんだ。