まじか。


入っていく、…入っていく?


簡単に言えばもっと親しくなるってことか。



「……その人のなかまで入っていけるようになるには頑張らなきゃですよね」


「ま、そうだね」


「その為に頑張ることなんてしたくない、しなくてもいいと思う場合はどうしたら?」


「それはその人がその程度の存在ってことだから、頑張らなくていいと思うよ。でもこれだけ悩むなら頑張ってみてもいいかと思うけどね」



………ははあ、なるほど。


さすが先輩だ、わたしより広い世界を見てきただけある。


顎に手を添えて考え込むわたしの頭をもう一度撫でた先輩は時計を見て立ち上がる。



「今宵」


「あ、はい?」


「もう答えは君の中にあるけど気付いてないだけかも」


「…え」


「でも俺、そういうの全く関係ないしいつでも変えられると思ってるから、覚悟してて」


「はい、…はい?」


「じゃあ。おやすみ、今宵ちゃん」



自転車の鍵を外してサドルにまたがった先輩は、ひらりと手を振って夜に消えていった。


最後の先輩の言葉はよくわからなかったけれど、先輩の言葉に考えさせられたのは事実だ。


好きに動こう、そうしたら多分思うように動くだろう。



「おーい今宵、何してんだよ」


「ごめん、もう行くから」



玄関から顔を出した千に謝りながら、わたしは家の中へ入った。


……別に宮崎がいようといまいと、今のわたしには多分、どうでもいい。