ぼそりと呟いたつもりだったのだが、茜には聞こえていたらしい。
「今宵だって恋する乙女じゃん」
「へ?」
「だって宮崎に恋してるんでしょ」
「……」
宮崎に、恋……。
可笑しなことに素直に頷けなかった。
昨日はアレだけ、会えたこと、話せたこと、カイロをくれた優しさを知れたことが嬉しくて慌ててたくせに、可笑しい。
今日のわたしからした宮崎の存在は、「恋をしたい相手」なのかどうかわからなくなっていた。
「今宵?」
「……恋って何?」
「は? んーと、好きな人と一緒にいたい、ってことじゃない?」
一緒にいたい?
わたしは宮崎と一緒にいたいのだろうか。
昨日初めて話したくせに、宮崎と一緒にいる時ちゃんと間が持つのだろうか。
もしかしたら「好き」ではなく「憧れ」なのかもしれない。
学年トップで無表情の影王子が「憧れ」になるには十分だろう。
スマホケースに入っていた彼の写真だって、実を言うと高校に入学してすぐの時に『宮崎蒼馬の写真を持っていると綺麗になれる』というくだらない噂を鵜呑みにしているからというだけだ。
茜はそんな噂、忘れたんだろうな。
だから、恋だといい始めたのだろう。
あんな噂、覚えている人の方が少ないかもしれない。


