「なにこれ?」



遅刻してきたのだから急ぐべきだろうが、下駄箱の戸を開けてそのまま、わたしは目を丸くした。



「どした、今宵(こよい)?」


「なんか手紙? がある」


「え! 呼び出し? 今宵なんかにモテ期到来とか生意気!」


「おい失礼だな」



隣で興奮している茜(あかね)を横目に、わたしは宛名もなにも書いていない真っ白な封筒の封を切った。


瞬間、柔らかな良い香りがした気がした。



「…なんじゃこりゃ」


「なに、なんだった?」



封筒の中から出てきたのは、想定外のものだった。



「パズルの1ピース」


「は?」


「いや、わたしがは?って言いたい」


「え、それだけ?」


「それだけ」



パズルのピースを片手に、もう片方で封筒の口をひっくり返す。


なにも出てこない。



「なにそれ、嫌がらせ?」


「さあ?」


「何にせよ告白じゃないとか、つまんないわー」



さっきの興奮ぶりが嘘のようにどうでも良さげな様子で、茜はポニーテールを結び直し始めた。


まあ、わからないでもない。


ちょっと告白かも、って期待しちゃったから。