戸惑いを隠せないわたしに気がついているだろう先輩だが、穏やかに微笑んだまま、おもむろにポケットを探り始めた。
そしてそこから出てきたのは、透明のカバーのような袋に入った紙の束。
えっ、ちょっと待って、それずっとポケットに入ってたの?
練習中もポケットの中に入ってたってことは、紙くしゃくしゃになってない?
目を凝らして紙の状態を見てみると、案の定。
ほら、くしゃくしゃじゃん。
さっきまで悶々としていたくせに、今はもう完全に紙の束が気になってしまって、それに釘付けのわたし。
そんなわたしへ、カバー越しに紙をまっすぐにするようにして撫でて、先輩がそれを差し出した。
「はい、これ今宵ちゃんに」
………え。
えっと、何だそれ、どうしたらいい?
「あ、さっきタオル取りに行った時にポケットにいれたものだから大丈夫だよ」
差し出した手を凝視したまま固まってしまったわたしに何を思ったのか先輩がそんなことを言う。
いやいや、何が大丈夫なんですか。
「今宵ちゃんに、だから」
ちらりと先輩を窺うと、笑顔のままではあるものの目が真剣そのものだと言うことに気がついた。
要は、わたしはこの紙を受け取らねばならないらしい。
どんな紙なのかわからず怖いものではあるが、そういうことなら仕方がない。


