そんな状態の先輩を今まで一度だって見たことがなかった。
真尋がいた時の先輩の高跳びの記録があまり良くなかったのだって、気がついてなかった。
知らなかった。
先輩も苦しんでいたこと。
今も、真尋がいた時も、苦しんでいたこと。
「今宵ちゃん。君だけに責任を押し付けていて自分だけ楽になろうとして、ごめんなさい。怒鳴ってしまって、ごめんなさい。真尋がいなくなっても何も言わずに近くにいて、ごめんなさい。本当にごめんなさい、ごめんなさい……!」
「……」
先輩が勢いよく頭を下げて、何度もわたしに謝っているからか、何も言葉が出なかった。
何を言えばいいのか、わからなかった。
少しして頭を上げた先輩は、黙り込むわたしを見て瞳を揺らした。
だからなのか、途端に言葉が口をついて出てきた。
「先輩も辛い思いをしていたんですね。それなのに、わたしだけ忘れて楽になろうとしたせいで先輩は痛みを共有できず抱え込んできたんですよね」
思うことを口に出してみれば、先輩の涙が止まった。
「わたしが全然気づかなかったから、痛みを共有できませんでしたよね。ずっと1人で悩ませてしまって、ごめんなさい」
頭を深く下げる。
先輩にも悪いところがあったことを知らなかったのは事実でどうしようもなかった。
だけど、わたしだけ忘れて楽になってた1年間は、先輩にとっちゃ辛いものだったに違いない。


