もしかしたら勢いだけで謝っているように見えるだろうか。
心がちゃんとこもっているように聞こえているのだろうか。
どちらにせよ、次の先輩の声がわたしの耳に届くまでわたしはこの頭を上げるわけにはいかない。
「……今宵ちゃん」
わたしが頭を下げてものの1分ほどで、先輩がわたしの名を呼んだ。
思っていたよりも、短かった。
頭を上げて、そう言われたから、ゆるゆると頭を上げた。
すると、先輩と目線が完全に絡んだ。
「今宵ちゃんに伝えなきゃならないことがあります」
敬語でそう言われたことで、何か怖くて悪いこと等を言われるのかとまた肩がびくりと上がった。
「先輩の話を聞いてくれる?」
「……はい」
悲しげに薄ら笑いをする先輩の目を見て、何を言われても受け止める覚悟を胸にわたしは頷いた。
「俺、青木矢尋は実の妹である青木真尋のことが大好きだった。だけど時にそれと同じくらいに大嫌いだった」
「き、らい…?」
「そう、君と出会う前に辞めたから知らないと思うけれど、真尋は高跳びの天才だったんだよ」
そんなこと、聞いたことがなかった。
「女なのに俺よりも身長が高くて足が長くて、高く跳べて、……だから真尋の存在が疎ましかった」
そんな先輩の想いも、聞いたことがなかった。


