だけど、その響きが体育館に反響して広がるだけで、何も来ない。
痛みが、来ない。
恐る恐る、うっすらと目を開けると、振り上がっていたはずの先輩の手がズボンのポケットに突っ込まれていた。
「え……」
「ん?」
「あ、いえ…」
先輩は何もなかったかのように眉を上げて不思議そうにする。
なんで?
だって今、わたしのこと殴ろうとしたじゃん…?
「あ、あの、先輩…」
まさか「殴らないんですか」なんて聞けるわけないし何を聞けばいいのかわからぬまま、それでも先輩の名を呼んでいる自分がいた。
何を言うと言うのだ、わたし。
わからない。
「先輩、わたし……」
「ごめん!!」
「……え」
ガバッと先輩がわたしに向けて頭を下げた。
……これは、どういう状況なんだろう。
こんな状況は予想していなかった。
わたしはどうしたらいいんだろう。
流れに、自分の本能に、任せてみるのがいいのだろうか。
………ならば、そうしてみよう。
「先輩、顔を上げてください。先輩は何も悪くないんです。わたしが悪いんです。…その、ごめんなさい!」
下がったままの先輩の頭よりも、もっと低く頭を下げたわたし。
こんな謝罪で済むとは思ってない。


