でも、あたしは猫じゃない。

赤の他人であるあたしに、大翔の幸せを邪魔する資格はないし、絶対にそんなことしたくない。

大切な人だからこそ。


「……帰れないなぁ、どこにも」


病院で最期を迎えるなんて嫌なんだ。

せっかくなら、そう、誰の目にもつかない場所でひっそりと消えてしまいたい。


「ほんとに、はは……笑っちゃう」


そう思うのに、なぜか今日一日見てきた光景が頭をちらついて離れなくて、あたしはぎゅっと引きちぎるように枕を握りしめた。