スマホを取り出し、電源を付ける。 暗闇の中、ぽわんと光ったスマホの残り残量は52パーセント。 明日一日、持つだろうか。 連絡先を開くと、たった一つだけ名前が載っている。 『桐ヶ谷大翔』 大翔は今なにをしているんだろう。 もう、どれくらい会っていないだろう。 唐突に帰りたいな、と思った。 「帰る場所なんて、ないのに」 そして自嘲を零す。 あたしに帰る場所なんてない。 元々住んでいた家にはもう死んでも帰りたくないし、大翔の家にも帰れない。