そっとカップのフチに口をつけると、熱いスープが喉を流れていった。
火傷しないように適温まで冷ましてくれている辺り、雅らしいというかなんというか。
塩加減もちょうど良く、優しい味わい。
さきほどの危なっかしい声が嘘のような美味しさに、あたしは思わず呟いた。
「美味しい……」
自然と肩の力が抜ける。
警戒しなければならない相手の前でどうかとも思うけれど、このスープの温かさには勝てない。
雅はそりゃ良かったとでも言いたげに目を細め、あたしがスープを飲み終えるのを黙って眺めていた。
……正直、そんなに見られてると落ち着かないんだけど。
半分ほどになったスープをトレイに置き、顔を上げる。
「なんで見てるの」
「それが俺の特権だから」
「特権?」
怪訝に眉を寄せ、聞き返す。
「俺が作ったスープをサリが飲んでる図をひたすら眺める至福の時間ってやつ」
「なにそれ変態」
間髪入れずに返すと、今度は雅が不満そうに眉を潜めた。
その反応がおかしくて、思わずクスッと笑みを零しながら顔を俯ける。



