雅はリビングのソファにあたしを降ろすと、恭しくキッチンで何かを作り始めた。


慣れていないのか、時折『あれ?』とか『うわっ』とかこっちがヒヤヒヤする声が聞こえてくる。


「ごめん、サリ。料理は柊真担当だから、簡単なものしか作れないけど」


「いいよ、そんな無理しないで。水だけあればあたしは生きていけるから」


冗談ではなく本気で言ったのに、雅は軽く受け流して、トレイにスープとパンを乗せて戻ってきた。


「総長特製コンソメスープ。味は保証する」

「……ありがと」


向かい側に腰を下ろし、雅は肘を預けて頬杖をつく。どこか得意げだ。


なんでこうなったんだっけ。

さっき起きたばかりなのにな、とあたしは苦笑しながらスープを手に取った。


食欲はないけれどせっかく総長自ら作ってくれたのだから、ありがたく頂こう。