「サリがなんでうちの学校に転校してきたかはわかんないけど、どちらにせよその時点で華鋼には狙われる可能性がある。仮にサリが人質にとられでもしたら、うちも自由に動けなくなるし、それならいっそ最初からそうならないように守った方が早い」
「守られるつもりはないし、あたしは胡蝶蘭に関わるつもりもないんだけど」
「だったら、明日転校する?」
「っ……それは」
こいつ、あたしがそうしないのをわかってて言ってる。
くっと唇をかみしめると、雅は薄笑いを浮
かべてあたしの顎を細く長い指で救い上げた。
「言っとくけど、俺は完全に信用したわけじゃない。だからこそ、目のつく場所で守りつつ監視する……それが一番合理的だって思っただけ」
「……あんたが悪魔って呼ばれる理由がなんとなくわかったような気がする。つまりは性格悪いってことね」
「ははっ、ご名答。でも、プラン的には悪くないと思うけど?家賃、光熱費はタダだしルームサービスとして風呂にベット、食事も付いてる」
至れり尽くせりだって?
だからなんなの?
「それに、ここに住んでればサリの何かしらの目的も果たせるんじゃないの?」
「っ……」
「――なんなら姫になる?」
ニヤリ、と。
試すように目を細めた雅に、ぶちんっとあたしの中で何かが切れる音がした。
だけどあたしがキレたときは怒鳴るわけでもなく、感情を顕にするわけでもなくただ無になるだけ。
感情を殺し、無表情で雅と向き合う。
突然の気迫に驚いたのか、雅に警戒の色が浮かんだ。



