嘘つき天使へ、愛をこめて



「ちょっと雅?どこいくのよ」

「いーから、付いておいでよ」


引かれるままに階段を登り、3階へ。

部屋の扉がいくつか並ぶ中、一番奥のつき
あたりの部屋の前で雅は立ち止まる。


そこだけ、他の部屋の扉とは明らかに様子が違っていた。


白いヨーロピアンモールで縁取りされたその可愛らしい扉は、建物内でも異質な雰囲気を醸し出している。


「サリ、姫って知ってる?」

「姫……?なにそれ」


おとぎの国のプリンセス、みたいな?


「簡単に言えば、族の棟梁の彼女のこと。俗称みたいなもんかな」

「棟梁って総長でしょ?雅の彼女ってこと?」

「胡蝶蘭でいうとそうだね。まあ今うちにはいないんだけど、過去にはいたこともあったから、ほら」


そういいつつ白い扉を押し開けた雅は、あたしに中を見ろと体を寄せた。


姫って、普通に彼女じゃダメなの?と半ば呆れながら、その部屋の中を覗き込めば、まあまあその部屋の凄いこと。


「うへぇ……乙女チック……」

「こーいうの苦手?」

「苦手っていうか、慣れない」


リビングに置いてあった家具を全て白とピンクに統一し、その名のまま〝お姫様〟が住んでいそうな女の子の部屋。


あまりの乙女チックさに思わずたじろいでいれば、扉に寄りかかった雅がおかしそうに笑った。