さすがにあたしの体に男は重い。
うぐぐ、と唸っているとそれに気づいて慌てて駆け寄ってきた唯織が慣れた様子で玲汰を持ち上げた。
「サリちゃんの事ばかり構ってたら、すっかりれいたんのこと忘れてたよ」
「い、いつもこうなの?玲汰って」
「うん、だから大体は俺が担いで連れてくる。そうじゃなきゃどこでも寝るから」
呆れた。
どこでも寝るの定義が、本当に〝どこでも〟だった人を初めて見た。
まさかあんな廊下で寝るなんて。
玲汰をソファに座らせて柊真の元へ戻っていった唯織をため息をつきながら見送り、あたしは玲汰の横へ座る。
――と、
「わ、ちょ、玲汰?」
かくんっと壊れた人形のように倒れ込んできた玲汰の頭が、あたしの太腿の上に着地。
そして、そのまま……っておい!
なんであたしが玲汰に膝枕しなくちゃいけないの!
いっそほっぺでもつまんで起こしてやろうか、とも思ったけれど、自分の太腿の上で眠る玲汰の気持ちよさそうな寝顔を見ていたらそんな気も失せてしまった。
母性本能というやつだろうか。
不覚にも子供みたいで可愛いな、なんて思いながらそっと緑の髪を撫でれば、玲汰は擽ったそうに身動ぎをした。
起こした?と焦ったけれど、玲汰はまたすぐに規則正しく寝息を立て始める。



