何もかもがめまぐるしい1ヶ月だった。

胡蝶蘭のみんなと、雅と出逢ったのがもうずっと昔のことのような気がする。


手術なんて受ける気はなかった。

これ以上生きている気もなかった。


それでもあたしは、今、もう一度生きる道へと歩きだそうとしている。


……この道の先で、大切なものを失ってしまうかもしれないのに。


「サリ」


気遣わしげな声に、あたしは顔をあげる。

雅らしくもない不安そうな顔が目に入って、思わず小さく笑った。


「なんであたしよりも不安そうなの」

「サリがそんな顔してるから」


そんな顔って、どんな顔だろう。

今まで感情を表情に出すことなんてなかったのに、あたしも随分変わったものだ。