「サリは俺たち胡蝶蘭の花そのものだ」

「花……?」

「うん、白い胡蝶蘭には幸福が飛んでくるって花言葉があるんだけど、ほんとその通りだなって。胡蝶蘭ってさ、きっとそういう思いも込めて付けられたんだろうね」

「ちなみに名付け親は咲妃だからな」


え?

唐突に割って入ったその声に、あたしと雅は驚いて振り返った。


そこには大翔をはじめとした胡蝶蘭の皆の姿。


「悪いな、邪魔して」

「言っておくが俺は止めたぞ」


柊真と櫂が申し訳なさそうに眉尻を下げるが、他のみんなは知ったこっちゃないようで、唯織と玲汰があたしのベッドに腰掛けた。


「雅だけのサリっぺじゃないしー!ね、れいたん!」

「……うん」


玲汰は返事をしながらも、眠たいのか首をかくんかくんさせている。


「咲妃が昔言ってたんだ。沢山の辛い思いをしてる皆に、ありったけの幸福が飛んでくるように、胡蝶蘭てつけたって」

「ママが……?」

「良い名前だろ。おかげでこうして皆、笑顔でいられるんだからな」


大翔は雅の頭をガシガシと撫でて、ニッと口端をあげた。


雅は鬱陶しそうにそれを払うと、小さく溜息をつきながらも、あたしに向かってしゃがみ込む。