「そーゆー強がり、もういらない」
「つ、強がりじゃ……」
「いいよ、もしサリが逃げたらまた追いかけるから。何度だって、見つけるから。言ったじゃん、俺はもう離さないって」
雅はあたしから離れると、立ち上がった。
そして「ちょっと待ってて」と言い残すと、部屋を出ていく。
どうしたんだろう、と思っていると程なくして雅は戻ってきた。
その手に持っているのは花瓶。
溢れんばかりに咲いているのは、まるい花びらを装わせたピンクの胡蝶蘭だった。
思わず、息を呑む。
「俺から、サリへのプレゼント」
「こ、これ……」
「サリは胡蝶蘭のピンクの花言葉知ってる?」
知ってるも何も、知らないわけがなかった。
「「あなたを、愛しています」」
声が重なって、雅は優しく微笑む。
花瓶を受け取ったあたしは、涙ながらに雅を見つめた。
こんなことをされたのは初めてで、なかなか言葉が出てこない。



