「……でも、変わったよ」

「え?」

「俺は、サリと出逢って変わった」



不意に、雅は笑った。

そしてゆっくりと顔を近づけてきたかと思うと、そっと唇を押し当てられる。


「っ……」


意識がはっきりした中でのキス。

優しくてとろけるように甘い、長めのキスは何故か少しだけ涙の味がした。


ゆっくりと離れた雅は、そのままあたしの額に自分の額をくっつける。


間近にある熱を持った瞳。

端正なその顔は、いつもよりもずっと近くであたしに向けられて。


「大切なヤツを守るためなら、この命だって厭わずに捨てられる」

「雅……」

「でも、サリはだめだ」

「え?」


なにがだめ?戸惑って聞き返す。


「たとえ俺が傷ついても、離れていくのは許さない。だからもう逃げないで。お願いだから、俺から離れていかないで」

「……うん」


雅のあの泣き顔を思い出す。

隠す様子もなく、ぼろぼろのあたしを抱えながら雅は泣いていた。


それは一種の強さなのかもしれない。

過去を乗り越えた証なのかもしれない。


「でも、いいの?」

「なにが?」

「あたし、嘘つき天使だから、また嘘つくかもしれないよ。雅のこと忘れて、どっか行っちゃうかもしれないよ」


結構本気だったのに、雅はまた笑った。

可笑しそうに「なにそれ」なんて言いながら。