「重い話だけど」

「いいよ。雅のことだもん」


頷くと、雅は少し寂しそうに笑ってベッドへ腰を下ろした。

あたしの手を握って、宙を見上げる。


「俺の両親は、もうこの世にはいない」

「雅のお父さんとお母さん?」

「……うん、二人とも俺が小さい頃に殺された」


殺された、という言葉にあたしはひゅっと息を呑む。


まるで、次元が違う。

とても興味だけで聞けるような話じゃない。

だから大翔は俺の口からは話せないって言ったのだろうか。


「強盗殺人って聞いたことある?俺は当時まだ幼稚園生でさ、バスの送り迎えで母親がいつまで経っても迎えに来なくて。仕方なく先生と一緒に、家に帰ったんだよね」

「もしかして……」

「そう、そん時に見つけた。荒らされた家の中に刺されて血を流してる両親をね。正直俺もところどころしか覚えてないんだけど、見つけた時のショックはどうしても忘れられない」


まだ幼稚園生の子どもが、両親が殺されている場面を見つけてしまうなんて、なんてえげつないんだろう。


聞いているあたしでさえ、ショックが大きいのに。


雅の横顔はとても悲しそうで、あたしはなんて声をかけたらいいのかわからなかった。