あたしは周囲に気を張りながら、不毛な輩の声の聞こえるほうへと足を向ける。


ビルとビルの狭間は月明りも届かない。


届かない分、あたしの正体はバレにくくなる。


だからあえて、情報収集をする相手は光のない場所に身を隠している不良たちを選んだ。



「……ねえ」



まあ、わざわざこんな場所へ足を運ぶこと自体、自分でもどうかしていると思うけれど。



「あぁ?」


「なんだぁ?」



まだ声をかけただけなのに、次々とすごむような低い声が闇の中から返された。


普通のか弱い女の子なら、これだけでも震え上がって腰が抜けてしまうかもしれない。


けれどあたしは全く動じず、暗闇の中へじっと目を凝らす。


4人、いや5人か。



「自らこの裏路地に入ってくるなんて、身の程知らずもいたもんだなぁ。わざわざ、やられにくるなんて」



けらけらとあざ笑う声が空気に伝わって響いていく。


それに答えないでいると男たちはあたしがビビっていると思ったのか、さらに耳障りな声で甲高く笑った。