「なに、いきなり。心臓止まるから」

「雅でもそんな反応するんだ」

「俺をなんだと思ってんの」

「えー、なんだろ」


こんな会話が、楽しくて。

思えば雅はいつもそばにはいたけれど、こうして二人きりで話すことは少なかった。


意図的にあたしが避けようとしていたから。
好きにならないように、気をつけていたから。

それもこれも、無駄になってしまったけれど。


「雅は優しい悪魔って感じ」

「それ矛盾してるじゃん」

「そう?」


でも、君にぴったりだと思うんだ。

たまにする意地悪そうな笑顔も、悲しそうな横顔も、実は結構純情キャラな所も。


君は優しい。

あたしはそれをよく知ってるから。


「ならサリは、嘘つき天使だな」


嘘つき天使?

あたしはきょとんと目を瞬かせる。


「それこそ矛盾してるじゃない。天使って嘘ついちゃだめでしょ」

「サリだから良いんだよ。在り来りの形を求める必要なんてないし、俺はそんなサリだから……好きになったんだから」


どきんと心臓が大きく跳ねる。

聞いたのはあたしなのに、いざ面と向かって『好き』と言われると反応に困った。


「っ……あれやっぱり夢じゃなかったんだ」

「夢オチにはさせない」

「……だって、色々、曖昧だし」

「なに、キスしたいってこと?」

「っ!?」


なんだ、なんなんだ。

雅の悪魔スイッチが入ってしまったのだろうか。