「……あたしね、まだこっちに来るなってママに言われた気がするの」

「え?」

「その手を離すなって、苦しくても、辛くても、生きれるなら生きなさいって。こっちへきたらぶっ飛ばすわよって、なんか怒られたような気がする」


ぶ、ぶっ飛ばす?

そこで大翔さんが噴き出した。


「それ、咲妃の口癖だ」

「え?」

「昔からよく言ってたんだ。何かある度にな、ぶっ飛ばすわよって。当時のガキ共はそれを言われたいがために、よく咲妃のことをからかっていたくらいだ」


大翔さんの瞳には薄らと涙が浮かんでいた。


「お前、ほんとに咲妃と会ったんだな」

「そうかもしれない」


サリは頷いて、俺の手を持ち上げ、顔の方へ持ってくるとぴとっと頬へ当てる。


「この手を、離すなって。だから、あたし、もう少しだけ頑張ろうかなって」

「……それって」

「……手術、受けてもいいかな」


大翔さんの瞳が大きく見開かれて、一層潤んだあと、深く頷く。


俺はほっと息をついて、柊真たちを見た。

皆それぞれに頷いている。


伝わったのだろうか。

サリには、俺たちの想いが。