「くっそ、この女つえぇ……!」

「怯むな!こっちは総長がやられてんだぞ!それにさっき華鋼の方に連絡入れておいたから、もうすぐ来るぜ。そうなりゃこの女だって終わりだ」


残り片手で数えられるほどになった時だった。

男がそんなことを言い出したものだから、あたしも思わず顔を顰める。


華鋼に連絡した?

ちょっとちょっと、なにやってくれてんの。


「逃げてきた意味ないじゃん!……あ」


男の腹に叩き込もうとした鉄パイプが、勢い余って手から抜けて飛んでいく。


カランカラン、とコンクリートの冷たい地面の上を転がっていった。

男達が嘲笑うように声高く笑った。


その声の高さに、あたしは耳を抑える。

キーン……とすると同時、一瞬だけ視界が真っ暗になった。


やば、と思うがいなか。


ガンッ!


「っはっ……!」


後頭部から背中にかけて電流に打たれたような凄まじい衝撃と痛みが走り、あたしはそのまま地面に転がる。


倒れかけた一瞬の隙をついて、いつの間にか回復していたらしい男が鉄パイプで殴ってきたらしかった。

あまりの衝撃に、遠のいていた意識が一周回って戻ってくる。


霞んだ視界の中で、ぐらんと揺れる身体をなんとか起こし後頭部へ手を回す。

ベチャッ……とした、何かが触れた。


「あーあ……」


見れば、手は真っ赤に染まっていて。

それが計らずとも血だということは、誰にでもわかった。


「お、お前やりすぎだ!こいつは人質だぞ!?殺すんじゃねえ!」

「ひっ……!だ、だって、いや、死んでねえし!生きてるし!あんなの食らって起きてるよこいつ!」


だからうるさいってば。

起こしたのはあんたでしょうが。


危うく意識が飛びかけたところに、あんな衝撃食らったら脳もびっくりだよ。