あたしは素早く身を屈めて、とりあえず一番弱そうな例の頬ガリ男へ突っ込んだ。


「がはっ!」


驚いたように目を剥く男のみぞおちに一発肘を食いこませると同時に、その手から鉄パイプを奪い取る。

一発で地面に伸びた頬ガリ男に、その場にいた数十人の男達が奇声をあげた。


「「総長ぉぉぉ!」」

「え?総長?」

「この女っ!総長をやりやがった!」

「よくも!」


素手パンチが飛んでくる。

あたしは素早く身を捩り、そのまま後ろへバク転して交わす。


「ちょっと待った、これが総長?え、冗談でしょ?嘘でしょ?これが?」


次いで、鉄パイプが頭上に時速100キロはありそうな勢いで振り下ろされた。


あたしはそれを奪った鉄パイプで受け流しながら、振り下ろしてきた男に回し蹴りを食らわせる。


「こっ、これがこれが言うんじゃねえ!こう見えても総長なんだよ!こう見えてもな!」

「なんだ、貴方達も“こう見えて”って思ってるんじゃない」

「うるっせえ!」


なりふり構わず次々と襲いかかってくる男達に、あたしは平然と返しながら、ひとりひとり確実に沈めていく。


隙だらけだ。どこもかしこも。

ずっと強くなるために、大翔相手に戦ってきたあたしにとっては、子どもを相手にしているも同然の相手。

こんなものなのか、族って。