「なんだっけ、強靭?」
「惜しいなぁ、龍靭だよ」
「ああ、そうだっけ」
「強靭も強そうだけどねぇ」
まあね、なんて頷く。
ていうか、なんであたし胡蝶蘭の敵対族の奴と普通に話してるんだろ。
向こうもはっと我に返ったらしく、慌てたようにまた鉄パイプを振り回し始めた。
「そうじゃなくてぇっ!ボクら龍靭にもさぁ、面っていうのがあるからさぁ、やられっぱなしってわけにはいかないんだよねぇ」
「はぁ、で?」
そんなこと関係ないし。
だいたいあたし、姫でもないし。
「で?って……噂には聞いてたけど、本当に怖いもの知らずな嬢ちゃんなんだなぁ。俺たちは胡蝶蘭みたいな甘ちゃんとは違って、女でも子どもでもフッツーに手ぇ出しちゃう族だからねぇ?」
「あっそ」
「あっそって……立場、わかってる?」
ああもう、うるさいな。
あたしは痛む頭を抑えて、深い溜息をついた。
どこまでもついてない。
どこまでも、どこまでも。
神様は不公平だ。
なんであたしばかり、こんな思いをしなくちゃならないんだろう。