あたしは、何故か雑然とした汚い倉庫の中央で、やたらと怖い顔をした男集団に囲まれていた。


いったい、なにがどうしてこうなった。


屋敷から離れるのに必死で、方向感覚なんて掴めていなかった。

ただ走りに走って、物もろくに食べていない病に蝕まれた身体ではすぐに限界がきて。

なんとなく、通りすがりの人気がなさそうな倉庫に立ち入ったはいい。



……あたし、もしかして超絶運が悪い?



「よおよお、嬢ちゃん。誰かと思ったら、噂の胡蝶蘭のお姫さまじゃねぇかよぉ」


正面から頬骨が痩け、ガイコツのような男が鉄パイプをぶんぶん振り回しながら近づいてくる。


いや、普通に気持ち悪い。

近づくな、馬鹿。


「ていうか、あんた誰?」

「っ、えっ?」


あたしが臆することなく訊いたからだろうか、男は驚いたように一瞬足を止めた。


「あ、あー、ボクはねぇ、ほら、昨日嬢ちゃんとこの暴君達と喧嘩したとこの弟分的なねー?」


喧嘩したところの弟分?

そういえば前にそんなことを雅から聞いたような気がしなくもなくもない。