「……ごめんね、大翔」


少し一人にさせて。

そう言うと大翔は悲しそうに瞳を伏せて、部屋を出ていった。


シンとした部屋の中で、あたしはぎゅっと目を瞑る。


「ママは、強かったんだね」


そう零したと同時に、目から水滴が流れる。


あたしはそんなに強くなれないよ、ママ。


温かいものを知ってしまったら、余計に離れられなくなってしまう。

これ以上ここにいたら、きっとあたしは命に執着してしまう。


つまりあたしは、まんまと大翔の思惑にはまってしまったわけだ。


一番来ては行けないところに来て、出逢ってはいけない人達に出逢ってしまった。


中途半端で、強くなりきれなくて、不甲斐なくて、理不尽で、泣きたくなって、自分が分からなくなって。


感情だってなくなっていたはずなのに、今はもうこんなにも苦しい。痛い。

心が、こんなにも、痛い。


「もう、嫌……っ」


あたしは、枕に顔を押し付けるようにして、声を押し殺して泣いた。

泣き続けた。