嘘つき天使へ、愛をこめて



「……やっぱりな。そろそろヤバいだろうとは思ってたが、お前、ずっと我慢してたんだろ。ここで暮らす中で、あいつらに心配かけないように」


「皆は、知らないから」

「言ってねえのか。この期に及んで」


言えるわけがない。こんなの。

あたしの残りの命は僅かです、なんて言ったところで何にもならないし。

どうにもならないし、変わらない。


確かに自分でもやばいとは思っていた。

そろそろ限界なのだろうと、感じていた。


ひっきりなしに襲ってくる激しい頭痛を何食わぬ顔でやり過ごすのも、倒れそうな目眩を隠そうとしてお腹が痛いとトイレに駆け込むのも、もう限界だった。


それでも、言えない。言いたくない。


「……ここへ来たのが間違いだった」

「いつから住んでる?」

「四日前」

「まだ四日か。これからじゃねえか」

「無理よ。もう、あたし死んじゃうもん」


大翔の顔が、ぐにゃりと歪んだ。

あたしよりも苦しそうで、辛そうで、思わず笑ってしまう。


「そんな顔、しないで」

「お前はっ……サリは、死なねえよ」

「死ぬよ」

「いいや、死なねえ。死なせねえ」


赤の他人であるあたしに、どうしてそこまで言ってくれるのだろう。

どうしてそこまで、悲しそうな顔をしてくれるのだろう。