嘘つき天使へ、愛をこめて



「テメーは総長だろうが。今何をすべきなのかを考えろ。仲間の命がかかってんだぞ」


雅は一瞬顔を歪め、ぶんぶんと顔を振るとあたしを見た。


その顔はなぜかとても複雑そうで、いつもの余裕たっぷりの雅ではなくなっていた。


数拍もなく、雅は小さく「……お前らは先に行ってろ」と零した。


察したらしい幹部メンバーたちは、雅に負けず劣らず複雑そうな顔をしながらも一切口を開くことなく、部屋から飛び出していく。


「……サリ」


びくっ!

名前を呼ばれ、あたしは思わず肩を揺らした。


雅はなにか言いたげに口を開きかけたが、一旦噤み顔を伏せる。


「……あとで、聞きたいことがある」


そしてなんとかそれだけ言い残すと、雅は振り切るようにして扉から飛び出して行った。