目が合ったその瞬間、手に持っていたマグカップがするりと滑り落ちる。

危うく柊真がそれを空中で受け止めた。


けれどあたしはお礼さえも言えずに茫然自失しながら、その場に立ち尽くすばかりで。


「……ま、話は後だ。お前らなんか緊急事態なんだろ。下でガキ共が騒いでる。お前らが帰ってくるまで留守は引き受けてやるから、早く行って帰ってこい」

「いえ、俺は残ります」

「そりゃーダメだろ。総長がよ」

「……でも、」

「あ?……あー、あぁ」


その人物は珍しく表情を崩す雅を見てははーん、とでも言いたげに、ひとり納得したように頷く。