その時だった。

たんっ、たんっ、たんっ……。


誰かが階段を上がってくる音が聞こえて、あたし達に更なる緊張が走る。


素早く玲汰と唯織が雅を守るように立ちはだかり、扉を睨みつける。

柊真はあたしを庇うように前へ進み出た。


その単調な音は、リズミカルにこちらへ近づいてくる。

そしてその足音は迷うことなく扉の前で止まり、寸もなく勢いよく開かれた。


「っ……!」


「よお、久しぶりだな、お前ら」


現れた人物に、幹部メンバーたち、そしてあの雅までもが大きく目を見開いて硬直する。


「……なんで、あなたが、ここに」


一瞬空気が緩んだような気がしたが、今度は別の意味での堅い空気が流れた。


やっとの事で吐き出された櫂の声は、まるで排水溝が詰まっているかのようにぎこちない。


「なんでって、そりゃちょいと用事ついでに後輩たちの様子を見に……」


その人物は不意にこちらを見て、柊真の横で石像の如く固まるあたしに気づくと、大きく片眉をあげた。