「とりあえずさ、サリ」

「なに?」

「やっぱ、うちにくれば?」


雅の口から流れるように発せられた言葉に、あたしは弾かれるように顔をあげた。


そんなの無理!と言うつもりだった。

いいや、言わなければならなかった。


もうこれ以上、キミ達とは近づけないんだって。

むしろ離れなければいけないんだって。


「前にも言った通り、衣食住は保証する。もちろん請求したりとかは有り得ないから、安心しなよ」


「……でも」

「正直に言おうか、サリ」


雅の長い指があたしの顎を掬いとる。

驚く間もなく、その整った顔が近づいてきてあたしは石像のごとく硬直した。


「これは、利害の一致だ」

「利害の、一致……?」


雅は頷く。幹部のメンバーたちは、誰も口を挟んでこようとしない。


「サリの利はうちに住んで衣食住を保証されること。うちの利は、それによってサリを守りやすくなることだ」


「……あたしを守って、何になるの。仲間でもないのに」


「サリは分かってないだけだよ。あの学校に女ひとりでいるってことの危険さをね」


「……どうかな。仮にあたしがどっかの悪族に誘拐されたとしたって、雅には……胡蝶蘭には、あたしを助ける義理なんてないでしょ。放っておいてくれて構わないし」


言い負かされるのは嫌だった。

毅然と言い返すあたしに、雅はしばし黙り込んでいたが、フッと目を閉じて息を吐いた。

指が離れていく。


「……ホント、どこまでも肝が据わってる」

「褒め言葉として受け取っておくわよ」


雅は負けたよ、と苦笑して肩を竦めた。