「み、ミヤビ……」
「ミヤビ?」
「月岡、雅だよ……っ」
声を震わせて〝恐ろしい〟とでも言いたげに弱々しく首を振る彼らに、あたしは小さく微笑んだ。
胡蝶蘭、悪魔、月岡雅。
もとから大した情報は得られないだろうと思っていたし、総長の名前を知れただけでもあたしとしては十分な収穫だ。
「ありがとう。……あと、この人。大丈夫だと思うけど、あまりにも痛がるようなら病院行ってね」
ちらり、と地面に伸びている刈り上げ頭の彼を一瞥し、目の前の男たちに背を向ける。
誰も追いかけてこようとはしなかった。
――月岡雅。
その名前が頭をめぐる。
道のりついでだからと余計な道草を食ってしまった。
でもまあ、知りたかった情報を手に入れられたから良しとしよう。
さっさとその場を後にしようと足を踏み出したその時、恐る恐る、と言った様子であたしを呼び止める声に足が止まる。
じゃりっ……と履いていたローファーが杜撰なコンクリートと擦れて音を立てた。
時間がないんだから、あたしに構わないでほしいんだけど。
僅かに振り向いて、眉間に小さな皺を寄せながら男たちへ何用かと首を傾げて見せる。



