雨の日の放課後。
部室の前に私とキミ。
一緒に帰る時に部室に用事を思い出した私は少し付き合ってもらった。
キミは大きな傘を広げて待つ。
(大きいな…)
そう思いながら
「お待たせ。」
そう言ってふたつの傘をひろげて
並んで帰る。
『今日バス何時?』
「ん~6時かな。」
『そっか。』
バス停について、二人でベンチに座る。
他愛もない話をする。
気付けば6時近くになっていた。
「もう少し、話、しよっかな…」
『いいよ。俺、待つから。』
「ありがとね。」
結局7時のバスで帰ることにした。
『ねぇ。』
「ん?」
『手、かして』
「いいよ」
周りが少し暗くなってきた頃、キミは言った。
キミは私の手をとった。
『ちっさ…手、小さいね。』
「小さくないし。」
『いや、小さい。背も。』
「背は否定できん。キミみたいな人が彼氏だとキスもろくにできんね。」
『確かに。俺が凄いかがまんと。』
キミは笑った。
『あと、顔も小さい。』
「…背が低いから。」
『いや、普通に小さい。』
「いや、…」
『だって俺の手で掴めそうだもん。』
私の言葉を遮ってキミは言った。
そして、手を私の顔間近まで持ってきた。
(息がかかりそう…)
顔が赤くなるのが分かった。
(暗くてよかった)
キミはなかなか手をどけてくれない。
そして、私のほっぺをつねった。
『ぷにぷに。』
「いいでしょ?」
『うん、可愛い。』
「…ありがと。」
『あと、前髪短いのも可愛かったよ。』
キミはそう言った。
そういえば最近まで前髪切りすぎ女子やってたんだっけ。
今は目にかからないくらいの長さ。
「ありがと。」
恥ずかしくてたまらなかった。
胸がドキドキした。
(知らぬうちに恋してたのかな…)
たくさん褒められたからだよ
そう言い聞かせた。
次の日から、放課後の勉強会はしなくなった。
授業も席が近くても話さない。
一緒に帰ることもなくなった。
それはまるで、今まで何事も無かったかのようだった。
周りにも言われた。
どうして一緒に帰らないの?
あれ?付き合ってたんじゃないの?
違うよ。
最初に、もとの二人に戻っただけだよ。
言い聞かせた。
でも、なぜか、凄く寂しかった。
私、なにかしたかな。
そう思うしかなかった。
でも思い当たる節もない。
月日は流れる。
卒業式。
私たちは何事も無かったかのように、話もせず、それぞれ最後の時を過ごした。
最後の体育館。
壇上で勉強会したなぁ
一緒に帰ったなぁ
思い出しながら、ボーッとしてた。
(帰ろう)
私は帰り道につく。
キミが目の前に背中を向けて帰っている。
私に気付いているかもしれない。
もしかしたら、気付いていないのかもしれない。
キミの背中を見ながら
私は少し、
キミの事を思いながら
「ありがと」
呟いた。
もうキミの姿を見ることはないと思う。
キミは最後まで何も言わず、
私も何も言わず、
お互い声をかけずに。
きっと密かに、私の心の隅に抱いていたであろう
いっときの、キミへのちいさな恋は
卒業式と一緒に、サヨナラをした。

