「愛美……お願い。やめて。こういうこと、もうしないで」
「…………」
「自分傷つけるくらいなら、俺を傷つけていいから」
消えそうな声が降ってくる。
汚い私の心に、彼の痛いほどにきれいな心が流れ込んでくる。
ばかじゃないの。何言ってるの。
私は、十分に圭太を利用しているよ。
首絞めちゃったり、冷たい言葉ぶつけたり、いっぱい傷つけているよ。
心が痛い。目の奥が熱い。
私もこぼれてしまいそうで、
でも、圭太に泣いている姿を見られたくなくて。
「ごめん。今日は帰るね」
と伝え、下を向いたまま私は彼から離れた。
松葉杖を拾って渡し、カバンを肩にかけ私は走った。
左腕には彼の涙に触れた赤い傷が。
そして、右腕にはお兄ちゃんの形見が光っている。
胸がどきどきする。
こんなのおかしい。だけど、止まらない。
圭太への感情が、止まらなくて、痛い。
だからこそ、やっぱり知っておかなきゃいけないことがある。

