「それより立ちっぱなし疲れるでしょ? ちょっと座ろ?」
不規則なリズムで進む圭太を、駅前広場に連れていく。
駅前のロータリー近くにある、空っぽの噴水前へ。
しかし――
「愛美ちゃん!」
ロータリーに停まった車から、私を呼ぶ声が聞こえた。
いつもより高めの、嫌なトーンで。
点滅するハザードとともに鼓動が早くなる。
嫌な予感は的中した。
視線の先には、車の窓を開け私を呼ぶお父さんがいた。
何でいるの? 迎えいらないって言ったのに。
圭太といるところも見られたくない。
「圭太、ちょっと隠れてて」
と言っても、彼は松葉杖にギプス。すぐ動けるわけがなかった。
お父さんが車から降りてくる。
一歩ずつ、私たちに近づいてくる。
風が吹き、スーパーの袋がこすれる音がすぐ後ろで鳴った。
嫌だ。来るな。来るな。

