きたない心をキミにあげる。



日曜日だからかサラリーマンよりも若者の姿が多い。


いつもより人が少ない改札を抜ける。



左右を見渡し、たむろっている人たちに目を向けた。



あれ。いないかな。


来てって明確に呼んでないし、仕方ないか。



そう思っていると、


「あのぅ」


と弱々しい声が降ってきた。



コイツ、いつも一言目はおどおどしてるよな、と吹き出しそうになる。



「来てくれたんだ」


「まあ。うん。近くだったし」



振り返ると、松葉杖を抱えた圭太がいた。



ギプスがついたままの右足を地面に落とし、ネギがはみ出たスーパーの袋を手にしている。



今日は黒いパーカーにハーフパンツ。


ギプスだからハーパンなのは分かるけど、こいつ私服パーカーしか持ってないのかよ。



「あれ。何でセーラー服? 今日学校?」


「ううん。今日49日で。お兄ちゃんお墓に入ったから」


「そっか……そうなんだ」



圭太は噛みしめるようにそうつぶやき、メガネ越しに視線をそらす。



「あのさ。愛美が良かったら。いつか俺も弘樹のお墓行きたい。あいつに話したいこといっぱいあるし」



「うん。結構遠いし坂も登るから、もうちょっと足が良くなってからだね」



話したいこといっぱいある、かぁ。


もうお兄ちゃんはいないし、骨が墓に入っただけだよ、とは言わないでおいた。